SAGD法による重質油の採収に関する
新たなプロセス(SAGD-ISSLW)の提案

 

佐々木久郎 (秋田大学(現九州大学))・秋林 智(秋田大学)・小助川洋幸(秋田大学)
加藤正重(ジャパン石油)・石黒 大樹(秋田大学大学院)
大野健二 (石油公団TRC(現JOGMEC))


English Page


図1 水蒸気チャンバーの形状と大きさの比較
(
貯留層モデル: 300 x 300 mm, 厚さ4.5 mm,t= 9 hours)

図2 チャンバー面積と積算油生産量の比較
(
貯留層モデル: 300 x 300 mm, 厚さ4.5 mm)

概 要
現在,SAGD法を適用した原位置採収法に関し,経済的に有利な地表面から水平坑井を掘削するサーフェスSAGD法(1坑井で実施する場合;シングルSAGD法)が試験的に実施されつつある。 ただし,SAGD法に関する問題点としては,初期のオイルサンド層の加熱に約6ヶ月が必要であることが挙げられる。この期間は蒸気の循環が行われるのみで生産が実施されないリーディング期間となる。 本研究では,リーディング期間の短縮および水蒸気チャンバー形成後の生産速度の増大を目的として,上部圧入井の他に下部生産井にも水蒸気の圧入機能を付加し間欠的な水蒸気刺激を与える新たなプロセス(SAGD-ISSLW法と呼ぶ)の特性について,縮小実験装置を用いて調べた。 ただし,サイクリックな間欠的水蒸気刺激を実施する理由としては,初期ステージではシングルSAGD坑井として機能することで水蒸気チャンバーへの刺激効果による早期の疑似ブレークスルーにつながること,下部の水蒸気圧入をサイクリックにすることで上部の圧入井からの水蒸気の圧入方向が変化させられ全方向への拡大が期待できることなどが挙げられる。 従来のSAGD法とSAGD-CSSLW法の比較実験を行った結果の一例を図1および図2に示す。 これらの実験結果から,従来のSAGD法での上部水平井だけからの水蒸気圧入に比較して,SAGD-ISSLW法の場合は水蒸気チャンバー形成に要する時間が短縮され,水蒸気チャンバーが生成された後において約30%程度の生産レートの増加とチャンバー面積が増大することがが実験的に得られた。 また,生産井の中心部に水蒸気ラインが通る坑井構造となるため,その損失熱が生産流体に伝達され副次的に流体の温度保持に役立つことから,UTFで実施されているサーフェイスSAGD法に適用した場合には油層から地上までの間における生産流体の温度低下に伴う輸送特性の低下を防止するのに有利と推測される。

参考文献
1)Butler, R.M., JCPT, 1985, 24-3, 42-52.
2)O'Rouke , J.C., et al., Petroleum Soc. of CIM and AOSTRA, paper #94-40, 1994.
3)Liderth, D., Daily oil Bulletin, May, 1995, 2.
4)Sasaki, K. et al, 1996, Proc. 2nd Int. Three-Day Conf. on Horizontal Well Tech.(SPE#37089)



Return to REsources Production & Safety engineering Home Page