研究内容
炭化水素エネルギー資源の超高効率的な生産・採掘技術の開発
我々はこれから先のエネルギー資源として欠かせない原油を研究しています.ただこれまでのように油田をやみくもに掘って原油を得るのではなく,すでに開発された油田を限界まで効率よく回収する技術を開発しています.この手法はEORと呼ばれます.日本は多くのエネルギー資源を輸入に頼っています.持続可能なエネルギー供給のためには原油のことを深く知り,グローバルスタンダードな技術開発を進めることが重要です.
様々な"新材料"や”技法"を用いることで,EORの効果増大を検証している.図のように多くのEOR手法があり,原油と流体界面での関係性を変化させることで,原油の流動特性が向上する.実験室にある顕微鏡や測定機器を用いて,物理的・化学的な分析を行っています.特にCO2-EORでは原油の回収率向上とともにCO2を地中に貯留することができるため,CCUとしても機能することができます.
得られた物理化学特性により,実際の油田を想定したラボスケールでのサンドパックコア(イメージ)を作成する.原油,地下地層や流体は世界各国で特性が異なる.我々は幅広い原油種やサンドパックコアを一様にテストすることで知見を獲得し,有効なEOR手法を提案していきます.
メタン"CH4"はエネルギー密度が高く,燃焼(酸化)してもCO2発生量は他の化石燃料より小さい.世界中でエネルギーを容易にかつ安価で安全に生産する技術が開発されている.我々はメタンハイドレード,コールベッドメタンやシェールガスのように非在来型資源に着目し,効率よくガスを回収するような技術を開発している.
図に示すようにシミュレーションや実験を駆使して,地下中の目で見ることのできない反応現象を可視化する.同時にCを持つエネルギーの宿命であるCO2に配慮しながらエネルギーを生み出すことが重要である.近年では,炭層に吸着されているCH4をCO2でスイープするECBM(Enhanced CoalBeds Methane)のCO2貯留特性を検証しています.
ブルー・ホワイト水素の高効率な採掘生産技術に関する研究
水素は二次エネルギー源である.世界の水素消費量はパリ協定のシナリオで予想すると2070年までに年間5.2億トンに達すると想定されています.水素は製造源の種類によって色分けされている.例えば,再生可能エネルギーで製造されたものはグリーン水素と呼ばれ,原子力発電から作られたものはピンク水素と呼ばれる.
ブルー水素は化石燃料から製造される水素(グレー水素)と副生するCO2をCCUSで処理したものである.我々は,この水素製造とCCSをプロセスとして一体にする技術に着目した.地下の原油燃焼により,CO2を地下に留めながら水素を生成する.この手法により原油を燃焼してもクリーンな水素を獲得することができる.石油工学,地下貯留工学,反応・移動現象論とあらゆる知見を駆使しながら,ラボスケールでの実験さらにウズベキスタンでの実フィールドでの試験まで準備している.
ホワイト水素は地中部の得意挙動により,地中内の反応に伴い水素が生成され,長年岩盤空間に貯留されたものである.アフリカのマリでは,水素貯留ポイントが発見され,所規模プラントとして運用されている.地中から天然に水素が発生される方法は数種類ほど予測されている.
我々は,その中でも天然鉱物と水との反応に着目し,その反応現象を検証している.と同時にこの桑馬手クリーンなエネルギーをできるだけ友好的に回収する必要がある.この工業的な生産に向けたプロセスの提案・実験的な検討により,将来のクリーンエネルギー減の確保につなげようとしています.
CO2の分離および地中貯留に関する技術開発
地球の大気温度はどんどん上昇しています.その原因の一つであるであるCO2の排出は火力発電所,工業プロセスや呼吸することも含めて,人間生活においてあらゆるところで排出されています.我々は"化石燃料"を使用しているため,その利用後の"CO2"についても責任を持って考えなければなりません.CCUS(Carbon Capture and Utilization, storage)プロセスは一つの解決手段となります.
火力発電から排出されるガスや大気からCO2のみを分離・回収し,そのCO2を高圧にして地中深くへ送ります(CCS).CO2はそのまま再生可能エネルギー由来の水素と合成してメタン,メタノールなどに変換されることもあります(CCU).CO2は大気中から除去されるため温暖化防止に貢献することができます
私たちはCO2分離に必要なエネルギーの低減を目的とした新規吸収液の開発や個体吸収材の設計およびスケールアップ時の塔内挙動の解析を研究しています.また,CO2を地下に効率よく供給し,安定的な貯留を目指した現象論の解明を行っています.将来的には貯留されたCO2は地中の鉱物と反応し,炭酸鉱物として固定されます.この現象をいかに促進させるかがCO2貯留の安定化につながります.このCO2固定化量の推定や速度工場の物性評価など実験的なアプローチで取り組んでいます.
ML(機械学習)を用いたCCSモニタリングシステムの構築
CCSプロセスでは,地中深く安定的なCO2貯留が進められています.貯留サイトは原油が滞留していた箇所が選定されることが多いです.サイトの上部にはキャップロックと呼ばれる緻密な岩盤層が存在します.これがシール層となり,CO2が上部へ漏れ出る可能性は小さいと言われています.しかしこの安定性はいつまで続くのか我々の時間感覚とは異なり,数百年あるいは数千年スケールとなります.仮に岩盤層に亀裂が入るとCO2が地上に漏れ出す可能性も万が一あるかもしれません.そのため,CO2が漏れ出す可能性を予期する,判断するためにはモニタリング技術が重要になります.
私たちは,地上でかつ簡便な方法でCO2の漏洩を検知する技術を開発しています.ただ,CO2の"漏れ"を地上で検出することは非常に難しい.なぜなら,通常の土や草などの生物による呼吸でCO2を排出しているため,貯留由来のCO2と生物代謝由来のCO2かの判断が難しいです.この判別根拠のために生物由来のCO2フラックス(流束)を定量する必要があります.
研究では,様々な場所,気候,時間などの多様な条件で地上のCO2フラックスを計測し,そのビッグデータを機械学習を用いて解析しています.得られた解析ツールによりCO2フラックスの予測を実際のCO2フラックスをマッチングさせ,CO2漏洩の検知技術に活かそうとしています.
バイオ技術を用いた新規金属回収・エネルギーシステムの現象解明に向けた評価
ヨウ化物酸化細菌と呼ばれる微生物を用いた新しい金(Au)のリーチング手法に関して研究を進めています.鉱山から採掘された金鉱石中から金を抽出する際,昨今多くの金鉱山では青化法(シアン化法)が用いられています.しかし,同工程で用いられるシアン化合物は非常に有毒で環境負荷も大きいため,シアン化合物に代わる金浸出剤の研究が必要とされています.
そこで,我々の研究室ではヨウ素に着目し,ヨウ化物酸化細菌がヨウ化物イオンを酸化することで生成するヨウ素によって金を鉱石中から浸出させることができないか検討しています.また,地下から金鉱石を採掘し地上で金浸出を図る従来の手法ではなく,地下金鉱床に向かって金浸出液(ヨウ化物酸化細菌、ヨウ化物イオンなど)を送り込み,地下原位置で金の浸出反応を進行させる原位置回収(インシチュ・リーチング)の実現可能性について、基礎的段階から検討を進めています.
CCUS技術の一環としてメタネーション技術が開発されている.再生可能エネルギー由来の水素と回収したCO2を反応させ,CH4を製造する技術です.工業プロセスでは,一部プラント設計されています.将来的にはメタネーションによるCH4製造が盛んになると期待されています.
現状の再生可能エネルギーで製造された水素にはコストや供給バランスなどの課題があります.我々は地下資源の知見を活かして,天然水素や余剰水素の貯留やCO2貯留場に対して微生物の力を利用して天然のメタネーションシステムを提案しています.長期かつ安定な地下でのエネルギー変換・貯蔵技術として実験やシミュレーションを用いて研究を進めています.
熱マネによる省エネルギー技術の開発
エネルギーの多くは最終的に熱となり排気されます.人類が利活用している様々なモノから廃熱が得られます.例えば自動車,スマホのバッテリーや代謝などもエネルギーの放熱体として捉えることができます.この捨てられている熱エネルギーを十分に再利用できれば,必要なエネルギーを余分に投入することなく,CO2削減にもつながります.
私達は、吸収着・反応現象を用いて排熱の温度を上げて再利用(ヒートポンプ)したり,冷熱(熱駆動冷凍機)に変換したり,利用した時まで貯める(サーマルバッテリー)技術を開発しています.また,廃熱を電気エネルギーに変換するデバイスの開発にも挑戦しています.
エネルギーをマネジメントする技術は材料の特性や熱交換器とミックスするための設計など“デバイス”にするために一つ一つ検証が必要になります.我々は自前の分析(共用装置も含めた)装置や検証装置を作成・実験しながら現象・新たな定理などを確認しています.さらに,アイディアを加えながら現実的な設計に落とし込んでいく開発を日々行なっています.